食いしばりが歯に与える影響〜症状・原因・対処法を歯科医が解説

「朝起きると顎が重い…」「歯が最近すり減ってきた気がする…」そんな違和感を覚えたことはありませんか?

実は、その原因が「食いしばり」である可能性があります。食いしばりは無意識に行われることがほとんどで、自分では気づかないまま放置してしまうケースが非常に多いのです。

放置すると、歯のすり減りや詰め物の破損、さらには顎関節症や歯周病の悪化まで引き起こすことがあります。今回は、船橋市海神の海神あらき歯科・矯正歯科の院長として、食いしばりが歯や体に与える影響・原因・対処法を詳しくご説明します。

ぜひ最後までお読みいただき、お口の健康を守るヒントにしてください。

目次

食いしばりとは?〜歯科的に見た基本知識

まず、「食いしばり」とは何かを整理しておきましょう。

通常、上下の歯が噛み合っている時間は、1日あたり15〜20分程度とされています。食事や会話のときだけ歯が接触し、それ以外の時間は上下の歯の間に「安静空隙(あんせいくうげき)」と呼ばれる2〜3mmの隙間が生じているのが正常な状態です。

しかし、食いしばりの習慣がある方は、この隙間がなくなり、歯が長時間接触し続けます。

食いしばりは専門的には「クレンチング」とも呼ばれ、歯ぎしり(グラインディング)とは区別されます。歯ぎしりが上下の歯をギリギリとこすり合わせる動きであるのに対し、食いしばりは上下の歯をぐっと強く噛みしめる行為です。

音が出ないため、本人も家族も気づきにくいのが食いしばりの厄介なところです。

ブラキシズムの3つのタイプ

歯ぎしり・食いしばりを総称して「ブラキシズム」と呼びます。大きく3つに分類されます。

  • グラインディング(歯ぎしり)…上下の歯を左右にこすり合わせる。ギリギリと音が出るため家族に気づかれやすい。歯のすり減りが顕著に起こる。
  • クレンチング(食いしばり)…上下の歯をぐっと強く噛みしめる。音が出ないため気づかれにくい。昼夜問わず起こる。
  • タッピング…上下の歯をカチカチと打ち鳴らす。3タイプの中では歯や顎へのダメージが比較的小さい。

クリニックでは、食いしばりのみを行っている方も多くいらっしゃいます。「歯ぎしりはしていない」と思っていても、実は食いしばりをしているケースは少なくありません。

食いしばりが歯に与える影響〜放置すると怖い5つのリスク

食いしばりは、想像をはるかに超える力で歯にダメージを与えます。

通常の噛む力はおおよそ自分の体重程度とされていますが、食いしばりや歯ぎしりの際にかかる力はその2〜5倍、場合によっては1トン以上になるとも言われています。毎日のようにそれだけの力が歯にかかり続けたら、どうなるか…。具体的なリスクを見ていきましょう。

① 歯が割れる・欠ける

エナメル質は人体で最も硬い組織です。

しかし、強い力が繰り返しかかり続けると、歯が欠けたり割れたりすることがあります。特に注意が必要なのが「歯根破折」です。歯の根っこが割れてしまうと、多くの場合、抜歯を余儀なくされます。虫歯や神経を抜いた歯はもろくなっているため、さらにリスクが高まります。

② 詰め物・被せ物が取れやすくなる

詰め物や被せ物をしている歯は、特に注意が必要です。

食いしばりによる強い力が集中し、詰め物が外れたり、被せ物が割れたりするリスクが高まります。「何度治療しても詰め物が取れる」という方は、食いしばりが原因の可能性があります。

③ 歯周病が悪化する

食いしばりは歯周病を悪化させる大きな要因になります。

歯周病はプラーク(歯垢)中の細菌による炎症ですが、食いしばりで歯を支える顎の骨に過度な負担がかかると、骨の吸収が急激に進みます。その結果、歯周病の進行が加速し、歯を失うリスクが高まります。

④ 知覚過敏が起こる

歯が欠けたり、エナメル質がすり減ったりすることで、冷たいものや甘いものがしみる「知覚過敏」の症状が現れることがあります。「最近、冷たいものがしみるようになった」という方は、食いしばりによる歯の損傷が進んでいる可能性があります。

⑤ 顎関節症を引き起こす

食いしばりの力は、最終的に顎関節にまで伝わります。

過剰な噛み合わせの力が顎関節に繰り返しかかることで、「口を開けると痛い」「カクカクと音がする」「口が開きにくい」といった顎関節症の症状が現れることがあります。顎関節症は日常生活の質を大きく下げる疾患です。早めの対処が重要です。

食いしばりが全身に与える影響〜お口だけの問題ではない

食いしばりの影響は、お口の中だけにとどまりません。

口周囲の筋肉が緊張すると、その影響は肩や首の筋肉にまで波及します。「原因不明の肩こりや頭痛が続いている」という方の中に、食いしばりが背景にあるケースは少なくありません。

頭痛・肩こり・首こり

食いしばりで「側頭筋」や「咬筋」が緊張すると、頭痛が起こりやすくなります。これらの筋肉の緊張は首や肩にも波及し、慢性的な肩こりや首こりの原因になります。

表情筋への影響・顔面痛

口周りの筋肉が過度に発達・緊張すると、ほうれい線が目立ちやすくなったり、顔面痛を感じたりすることがあります。また、エラが張って見える原因にもなります。

食いしばりは「顎だけの問題」ではなく、全身の緊張バランスに関わる問題です。呼吸が浅くなることで胸郭が固まり、その緊張が頸椎を経て顎の筋肉の過活動につながるという見方もあります。全身を一体として捉えることが大切です。

食いしばりの原因〜なぜ無意識に噛みしめてしまうのか

食いしばりの原因は、はっきりと特定されているわけではありません。

ただ、複数の要因が絡み合って起こることが多いとされています。代表的な原因を整理してみましょう。

① ストレス・精神的緊張

最も多い原因がストレスです。

歯が噛み合う刺激は脳へ伝わり、ストレスを一時的に緩和する作用があります。ガムを噛むとリラックスできるのも同じ仕組みです。ストレスが増えると、無意識のうちに脳への刺激を求めて食いしばりが起こりやすくなります。仕事や人間関係でストレスを抱えている方に多い傾向があります。

② 噛み合わせ・歯並びの問題

噛み合わせが悪いと、脳が「もっと強く噛め」という命令を出すことがあります。

開咬(かいこう)や過蓋咬合(かがいこうごう)などの不正咬合がある場合、無意識に奥歯で強く噛もうとする癖がつきやすくなります。歯並びの乱れは見た目だけの問題ではなく、食いしばりの誘因にもなります。

③ 集中・緊張する場面

人は集中しているとき、無意識に歯を噛みしめる傾向があります。

パソコン作業・スポーツ・勉強など、長時間集中する場面で食いしばりが起こりやすくなります。「デスクワーク中に気づいたら歯を食いしばっていた」という経験がある方も多いのではないでしょうか。

④ 睡眠の質の低下

飲酒・喫煙・カフェインの過剰摂取などが原因で眠りが浅くなると、就寝中の食いしばりや歯ぎしりが起こりやすくなります。枕の高さが合っていない場合も、顎や首に負担がかかり、食いしばりを誘発することがあります。

自宅でできる食いしばりの対処法〜今日からできること

食いしばりは、生活習慣の見直しでも改善できる部分があります。

歯科での治療と並行して、日常生活でできる対処法を取り入れてみてください。

① 歯を離す意識を持つ(TCH是正)

「TCH(Tooth Contacting Habit)」とは、上下の歯を無意識に接触させ続ける癖のことです。

普段から「上下の歯を離す」意識を持つことが大切です。パソコンや冷蔵庫など目につく場所に「歯を離す」というメモを貼っておくと、意識しやすくなります。気づいたときに歯を離し、深呼吸してリラックスするのがポイントです。

② ストレスを発散する

食いしばりの根本原因であるストレスを減らすことが重要です。

適度な運動・趣味・十分な睡眠など、自分に合ったストレス発散法を見つけましょう。ストレスが軽減されると、食いしばりの頻度も下がる可能性があります。

③ 睡眠環境を整える

枕の高さを見直してみましょう。

枕が高すぎると顎を引いた状態になり、気道が狭まって睡眠の質が下がります。自分の体に合った枕を使用することで、就寝中の食いしばりが軽減される可能性があります。また、就寝前のカフェインやアルコールの摂取を控えることも効果的です。

④ 顎・頬のマッサージ

食いしばりで緊張した咬筋(えら周辺の筋肉)を優しくほぐすことで、筋肉の疲労感を和らげることができます。ただし、強くマッサージすると逆効果になることもあるため、優しく行うことが大切です。

歯科でできる食いしばりの治療法〜マウスピースが基本

自宅での対処だけでは限界があります。

食いしばりが疑われる場合は、早めに歯科を受診することをおすすめします。歯科で行う主な治療法をご紹介します。

① スプリント療法(ナイトガード)

食いしばりの治療で最もスタンダードなのが「スプリント療法」です。

就寝中に「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースを装着することで、食いしばりによる歯や歯茎へのダメージを軽減します。マウスピースは患者様一人ひとりの歯列に合わせてオーダーメイドで作製するため、フィット感が高く、長期間使用できます。

最初は違和感を覚える方もいらっしゃいますが、使い続けるうちに慣れていく方がほとんどです。歯を守るためのクッションとして非常に有効な治療法です。

② 行動変容療法(認知行動療法)

食いしばりは無意識の習癖であるため、意識的に改善していく取り組みも重要です。

日常生活の中で「歯を離す」という行動を習慣化する訓練を行います。生活の中で目につく場所にリマインダーを置くなど、シンプルながら効果的なアプローチです。

③ ボトックス治療

筋肉の緊張が強くどうしても改善されない場合、ボトックス注射を行うことがあります。

ボツリヌストキシンと呼ばれるたんぱく質を咬筋に注射し、筋肉の過剰な収縮を抑制します。筋肉の緊張が緩和されることで食いしばりが軽減され、エラの張りが改善されるという副次的な効果も期待できます。

④ 噛み合わせの改善・矯正治療

噛み合わせの問題が食いしばりの原因になっている場合は、噛み合わせの調整や矯正治療が根本的な解決策になることがあります。

当院では、透明で目立ちにくいマウスピース矯正(インビザライン)やワイヤー矯正に対応しており、出っ歯・ガタつき・すきっ歯など幅広い症例に対応しています。食いしばりの背景に噛み合わせの問題がある場合は、矯正治療も選択肢の一つとしてご提案しています。

こんな症状があれば要注意〜食いしばりのサインをチェック

食いしばりは自覚しにくいため、以下のサインを参考にしてみてください。

  • 朝起きると顎が疲れている・痛い
  • 歯が全体的にすり減ってきた
  • 詰め物や被せ物が何度も取れる
  • 口を開けるとカクカク音がする・痛い
  • 原因不明の頭痛・肩こりが続く
  • 歯に縦方向のひびが入っている
  • 舌の外側に歯並びに沿ったデコボコがある(舌圧痕)
  • 頬の内側に白い線がある(頬粘膜圧痕)

これらのサインに複数当てはまる方は、食いしばりの可能性があります。

「まだ大丈夫」と放置せず、早めにご相談ください。

まとめ〜食いしばりは早めの対処が大切です

食いしばりは、無意識のうちに歯や顎、さらには全身にダメージを与え続ける習癖です。

歯のすり減り・詰め物の破損・顎関節症・歯周病の悪化・頭痛・肩こりなど、放置すると深刻な問題につながります。原因はストレス・噛み合わせ・集中・睡眠の質など多岐にわたり、複数の要因が重なることも多いです。

「気づいたときが、治療のベストタイミングです。」

自宅での対処法(TCH是正・ストレス管理・睡眠環境の改善)と、歯科でのマウスピース治療を組み合わせることで、食いしばりによるダメージを大幅に軽減できます。

「もしかして食いしばりかも…」と感じたら、ぜひ一度、海神あらき歯科・矯正歯科にご相談ください。患者様一人ひとりのお口の状態を丁寧に診査し、最適な治療プランをご提案します。

当院は千葉県船橋市海神町、コーナン京葉船橋インター店2階にあります。西船橋駅・船橋駅・海神駅からアクセスしやすく、800台の大型駐車場も完備しています。土日祝も診療しており、急な痛みや気になる症状にも当日対応しています。

「かみやすく、美しく、長持ちする治療」をコンセプトに、皆様のお口の健康を長期的にサポートします。お気軽にお問い合わせください。

📞 TEL:047-401-7369

〒273-0022 千葉県船橋市海神町3丁目124-3 コーナン京葉船橋インター店2F

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著者情報


海神あらき歯科・矯正歯科 院長
加藤 佑治

患者様一人ひとりのお口の状態やライフステージ、治療に求めるゴールは異なります。海神あらき歯科・矯正歯科では「患者様にとって本当に必要な治療とは何か」を大切にし、十分な説明と対話を通じてベストな治療プランを共に考えることを重視しています。
専門は歯周病治療ですが、むし歯治療、義歯(入れ歯)、矯正歯科、インプラント、審美歯科まで幅広い分野に対応し、総合的な歯科医療を提供しています。患者様が納得して治療を受けられる環境づくりを大切にし、お口の健康を長期的に支える歯科医療を目指しています。

西船橋の歯医者|海神あらき歯科

日付:   カテゴリ:歯科ブログ

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